外国人が性被害にあって支援を受けたいが言葉が通じない

日本語が母語でない外国人の相談例です。(兵庫県内の性被害についての相談や支援機関の紹介を行うNPO法人性暴力被害者支援センター・ひょうごに寄せられる相談・回答をもとに、地域や年齢など、個人を特定しないよう一般化してご紹介しています)

被害者:20代女性(日本語が話せない)
相談者:友人(日本人)
相談内容:被害を受けた女性は留学中の大学生で日本語はまだ片言しか話せない。「知り合って間もない男性から性被害を受けた。酔っていたため抵抗できなかった」と相談され、警察や病院に行くことを勧めたが、正しく言葉が通じるか心配している。通訳サービスはあるのか。

ただでさえ「性被害にあった」と警察や病院に行くことは容易ではありません。ましてやまだ滞在して日が浅い異国でトラブルに巻き込まれ、心細い思いをしていると思います。あなたのように心配してくれる人が「そばにいる」ことが何よりも大事です。勇気を持って打ち明けてくれたこと、友人として頼ってくれたことに対するあなたの気持ちを伝え、いっしょにできることを考えてみましょう。性暴力被害の支援機関に相談する際は、専門の通訳者が入ることにより、母国の文化や背景を理解したうえでの正確なコミュニケーションが期待でき、被害者と支援者の双方が安心できるというメリットがあります。
NPO法人性暴力被害者支援センター・ひょうご 相談窓口担当者

外国人が性犯罪にあったら

日本に滞在する外国人は大きく永住外国人、就労や留学など90日を超える滞在(在留外国人)と観光や商用など90日以内の短期滞在者に分類されます。令和3年6月末の在留外国人数は282万3,565人、令和2年の新規外国人入国者数は430万7,257人で新型コロナウイルス感染症の影響で減少しているものの、相談のようなトラブルで困っているケースはあります。
性犯罪被害者が日本語が母語でない場合、支援を求めるときに一番困るのが”言葉の壁”でしょう。日本語が話せる同国人(家族、親戚、コミュニテイ内の知人)が通訳する場合はプライバシーが守られない可能性もあり、また医療や法律など専門知識が必要な場合に正確に通訳できているか判断ができないことが問題です。日本にも通訳サービスが徐々に普及していますが、外国人にその情報が届いているとは言いがたい現状です。ここでは医療、法律、生活の相談について日本語の話せない性被害者が使える兵庫県内のサービスについて記します。

無料で各国の言語に翻訳ができるツールもありますので、“自動翻訳”などのキーワードで検索したサイトなどで下記のテキストを翻訳し、被害者に伝えてください。

病院に行きたい

レイプにあってから72時間以内であれば緊急避妊ピル(薬の名前はノルレボ)を産婦人科で処方してもらいます。夜間や土日祝日であれば、119に電話すると産婦人科の救急病院を教えてくれます。緊急避妊ピルを処方してもらうのは15000円から20000円かかります。出血や痛みがある場合はそれも医師に伝えて診察をしてもらいましょう。被害によって性感染症にかかっていないか検査をしてほしい場合も医師に伝えてください。

医療通訳サービス
病院によっては通訳サービスを導入しているところもあります。
導入している病院のリスト:医療通訳 | 多言語翻訳・通訳 | 多言語センターFACIL (tcc117.jp) 
※ただしオンライン通訳料金が1650円かかります。

兵庫県立尼崎総合医療センターでは無料のオンライン通訳サービス(Mediphon)を導入していますが、タブレットに限りがあるためあらかじめ受診を伝えておくとスムーズです。
日本政府観光局(JNTO)のホームページに掲載されている「救急病院のかかり方」は6カ国語対応となっています。

警察に行きたい

加害者を捕まえてほしい、裸や性行為の写真を撮られた、つきまとわれているといった場合には被害にあった場所の警察署へ相談します。「支援機関一覧」から「法的支援」で絞り込んで警察にご相談ください。
兵庫県警察被害者支援室によれば、日本語以外の母語の場合には、兵庫県内でその言葉が話せる警察官が、電話による三者通話などで事情聴取をサポートするということでした。警察に相談すると、医療費をかわりに支払ってくれる場合もあります。証拠として病院で採取した膣内容物やそのとき身につけていた衣類を警察に提出することを求められることもあります。
兵庫県警察のホームページは上部の「言語選択」で6カ国語で表示が可能です。兵庫県警察 (hyogo.lg.jp)

弁護士に相談したい

加害者に謝ってほしい、慰謝料を請求したいときは「支援機関一覧」から「法的支援」で絞り込み、法律相談ができるところを探してください。相談は基本的には日本語なので、通訳は自分で手配することになります。無料の法律相談は時間が決まっているため、通訳をはさむと十分な相談時間が確保できません。あらかじめ相談したい内容を通訳者と打ち合わせて、紙1枚程度に書き出してから弁護士を訪問しましょう。

生活の相談

性犯罪・性暴力に特化した支援団体ではありませんが、外国人女性の相談先としては「アジア女性自立プロジェクト」では行政の窓口などへのつきそいが可能です。英語とタガログ語での電話やオンライン相談、対面での相談を受けており、その他の言語では通訳者を手配します。
日本に住む外国人の方へ(にほん に すむ がいこくじん の かた へ) | アジア女性自立プロジェクト (tcc117.jp)

そのほかにも目的に合わせて兵庫県内で外国語で対応できる相談先を紹介できますので、NPO法人性暴力被害者支援センター・ひょうごへ電話(日本語)かメールで相談してください。