この手引き作成のきっかけとなったのは、性暴力被害者支援センター・ひょうごのホットラインへの、先生からのSOSでした。
「被害者も、加害者も、うちの大切な生徒。どうしたらいいのでしょうか」と言う声は切迫していました。
国においては平成25年に「いじめ防止対策推進法」が施行されましたが、兵庫県教育委員会はそれより以前に平成19年から教職員用の「いじめ対応マニュアル」*を作成しています。学校における性暴力被害対応は、いじめ問題への考え方や取り組みと基本的には同じです。しかし異なる点として、目撃者がいないことが多く事実確認が難しいこと、性の問題は扱いにくいこと、プライバシーへの配慮が必要であることの3点が挙げられます。また場合によっては医療機関や警察との連携も想定されます。事態を過小評価したり、一部の教職員が抱え込んだりすることで、被害児童生徒へのケアが後手になるばかりか加害児童生徒も過ちを正すチャンスを失うことになりかねません。
本手引きは兵庫県教育委員会が作成した「いじめ対応マニュアル」平成29年度版を参考に、冒頭の事例のあった学校教諭を中心に教職員を支援する関係機関と有識者が5回のワーキングを経て作成されたものです。
「加害・被害児童生徒が同じ学校に在籍し、学校の管理下でおこった性暴力被害対応」という、最も学校が対応に苦慮するケースに焦点を当てましたが、家族からの性虐待や、加害者が教職員、外部の者であっても対応のポイントは同じです。紙面の都合上、最も重要な予防教育については簡単に記載するにとどめていますので、巻末の文献をご参照ください。この手引きを活用し、学校が子どもたちにとって安心で安全な場所となるよう、学校内だけでなく関係機関とチームとして取り組んでいただけることを願っています。
執筆者代表 田口奈緒
WEBテキスト版
ページ下部からダウンロードできるPDF版「危機管理の手引き」の内容をWebページでご覧いただけます。
性暴力の定義と学校での性暴力被害対応の概要
学校で性暴力被害がおこった場合のタイムライン(学校全体の取り組み)
学校での性暴力を未然に防止するための教育、いつから、どのように?
学校での性暴力を早期発見するためにー「いじめアンケート」のサンプル
被害児童生徒への対応(総論・各論)
被害児童生徒の心のケア
性暴力被害者のトラウマ反応の例
性問題行動を起こす児童生徒への対応
性暴力加害・被害について、子どもへ聞き取りをする際のポイントとケースシートの例
学校での性暴力に関するFAQ、こんな時どうしたら?
└被害児童生徒が被害届を出したくない/他の機関には相談したくないという時には?
└加害児童生徒が認めないときの対応
└学校が被害児童生徒や保護者から 加害児童生徒の出席停止を求められたら?
└インターネット上の被害を相談されたら?
警察・性暴力被害者支援センターができること
弁護士ができること
学校で性暴力被害があった時のマスコミ対応
学校で性暴力被害があった時の連携先一覧(兵庫県)
学校関係者が読んでおくべき性暴力関連の文献・書籍/参考サイト
PDF版ダウンロード
「学校で性暴力被害がおこったら 被害・加害児童生徒が同じ学校に在籍している場合の危機対応手引き」
発行:2020年6月
発行元
国立研究開発法人科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)による「安全な暮らしをつくる新しい公/私空間の構築」研究開発領域で採択されたプロジェクト「トラウマへの気づきを高める“人―地域―社会”によるケアシステムの構築」の成果物です。教育関係者、医師(小児科、精神科、産婦人科)、福祉、警察、弁護士、NPOなど多領域の関係者で作成しました。
調査研究者:兵庫県立尼崎総合医療センター 田口奈緒
性暴力被害者支援のための活動サポートをお願いします
このウェブサイトを運営している「性暴力被害者支援センター・ひょうご」は、性暴力の被害者支援や予防的活動を行っています。上記の「危機管理の手引き」の配布や「バーチャル・ワンストップ支援センターひょうご」の運営にかかる費用等に充てさせていただきたく、お一人でも多くにご支援いただけると幸いです。
郵便振替の方は、一口千円より下記にお願いいたします。
振込先 郵便振替 00950-4-274165「性暴力被害者支援センター・ひょうご」