レイプドラッグ(睡眠薬など)を飲まされ、意識がなくなっている間に性暴力被害にあった

薬物やアルコールで意識を失っている間に性被害にあった可能性のあるケースです。(兵庫県内の性被害についての相談や支援機関の紹介を行うNPO法人性暴力被害者支援センター・ひょうごに寄せられる相談・回答をもとに、地域や年齢など、個人を特定しないよう一般化してご紹介しています)

被害者・相談者:20代女性
相談内容:男女の友人数名と飲み会をしていて、途中から記憶が途切れた。気がついたら男性の家に加害者と自分しかおらず、下着をつけておらずレイプされたのでは、とパニックになった。その男性から「また会おう」と連絡がきて恐怖を覚えている。

飲み物などに薬剤を混入させたり、酒に酔わせたりして意識を失わせた状態で性行為に及ぶことは犯罪です(刑法第百七十八条 準強制わいせつ及び準強制性交等罪)。いつもの量より飲み過ぎたわけではないのにまったく覚えていない場合は、レイプドラッグと呼ばれる薬剤を混入された可能性も否定できません。
記憶がないことで何があったかわからず、恐怖を覚えるのは当然のことです。友人だと信頼していた人からの裏切りにショックを受け、また相手を信じてしまった自身を責める気持ちもわいてくるかもしれません。それらは性暴力にあったあとにしばしばみられる反応です。悪いのは加害者であり、あなたに落ち度はありません。
あなたの安全と身体を守るためにできるだけ早く警察と医療機関に相談しましょう。ひとりで心細いときは家族や友達、今回の出来事を話せる誰かに付き添ってもらえると安心です。
NPO法人性暴力被害者支援センター・ひょうご 相談窓口担当者

レイプドラッグとは

欧米では以前よりデートレイプドラッグと呼ばれ、社会問題となっていましたが、日本でも2017年の刑法改正以降、啓蒙とともに周知が進んでいます。睡眠薬などを食べ物や飲み物に混ぜることで、被害者は意識を失ったり、体に力が入らなくなったり、危険を回避する判断ができなくなったりします。被害時の本人の記憶があいまいなために事件を立証することが難しく、それゆえ薬物を摂取させられたことの事実証明が必要となります。これらの薬物は半減期(体内から排出されていく時間)が短い事が特徴です。ですので、警察官や医療者は「記憶がない」と聞いたら必ずレイプドラッグを疑い、尿検査や血液検査をすることが重要です。
薬物やアルコールなどを使用した性犯罪・性暴力に関して | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp)

ワンストップ支援センターに相談する

各都道府県には性暴力被害にあった方の話を聴き、医療や法律に関する相談先につなぐワンストップ支援センターがあります。兵庫県には2カ所あり、医療や法律相談、カウンセリングに関する費用も相談することができます。下記はそのうちの一つです。病院の中に開設しており、相談後そのまま受診をすることができます。
NPO法人性暴力被害者支援センター・ひょうご

もしも、電話よりも文字でのやりとりの方が慣れているのであれば、SNSやメールでの相談も可能です。
メール相談なら:NPO法人性暴力被害者支援センター・ひょうご
SNS相談なら→キュアタイム:Cure Time 性暴力の悩み、相談してみませんか?

警察に相談する

被害にあった場所の警察署へ相談します。「支援機関一覧」から「法的支援」で絞り込んで警察にご相談ください。男性警察官には被害内容を話しにくいと感じることもあります。希望があれば、女性警察官が対応してくれるように伝えましょう。
警察に被害届を出すと大ごとになるのでは、と心配な場合でも、相手がこのような行為を繰り返したり、エスカレートさせたりするのを防ぐため、被害事実に関して通報はしておいたほうがよいでしょう。加害者は常習的に今回のようなことを行っている可能性もあります。
警察に相談すると対応してくれる医療機関を探してくれて、付き添ってくれることが多いです。被害後時間がたっていなければ、あなたの体に残った証拠から加害者が特定できるからです。被害から時間がたっている場合でも、毛髪などから薬物が検出できる可能性もあります。(参考:性暴力救援マニュアル 医療にできること 種部恭子 新興出版社
また、かかった医療費を公費で負担してくれることもあります。
警察に行く前に、心配なことがあれば電話で尋ねてみましょう。女性警察官が対応してくれます。
性犯罪被害相談電話:0120-57-8103

病院に行く

薬物やアルコールは速やかに体から排出されていくため、できるだけ早く医療機関を受診し、尿検査や血液検査をすることが重要です。
膣内からの証拠は時間の経過とともに検出することが難しくなってしまいます。警察に届けるかどうか迷っている場合でも、証拠採取をしてくれる医療機関がありますので、上記のワンストップ支援センターで尋ねてください。レイプドラッグで性被害にあった場合は、本人の意識がなく抵抗しないため性器に傷が残っていないことが多いです。それでも傷がないか、また性感染症にかかっていないか産婦人科で診察してもらうことは、あなたの体のために大事なことです。

妊娠の可能性があるとき、被害後72時間以内であれば緊急避妊ピルを産婦人科で処方してもらいます。「支援機関一覧」から「相談場所」と「体のケア」で絞り込みましょう。夜間や土日祝日であれば、119に電話すると産婦人科の救急病院を教えてくれます。
緊急避妊ピルはどこの薬局にも置いてあるわけではなく、プライバシーの問題もあるため、院内で処方できる医療機関を受診した方がスムーズです。
警察に性犯罪被害を相談すると、尿検査、血液検査、性感染症検査、緊急避妊ピルなどの費用を公費負担してくれることになっています。

弁護士に相談したい

加害者に謝ってほしい、慰謝料を請求したいときは「支援機関一覧」から「法的支援」で絞り込み、法律相談ができるところを探します。その場合でも被害事実があることが重要なので、警察や医療機関での相談を強くお勧めします。