中学生男子が小学生女児の身体を触ってしまった。どのように指導をしたら良いか

中学生男子の性加害の相談の例です。(兵庫県内の性被害についての相談や支援機関の紹介を行うNPO法人性暴力被害者支援センター・ひょうごに寄せられる相談・回答をもとに、地域や年齢など、個人を特定しないよう一般化してご紹介しています)

被害者:小学生女児
相談者:中学校教員
相談内容:中学生の男子生徒が、学校帰りの小学生女児を路地に連れ込んで胸を触ったという。被害児童の保護者は警察に被害届こそ出さなかったが、家庭と学校で厳しく指導をしてほしいと強く要望した。男子生徒本人は反省を口にはしたものの、その後もスマートフォンでアダルトサイトにアクセスしていたと保護者から連絡があった。学校はどのように指導をすればよいか。

学校では性暴力被害児童生徒のケアを求められるだけでなく、性問題行動を起こす児童生徒の指導をしなければならない場面も多くあります。次の被害者を出さないために加害生徒への指導は大変重要ですが、性問題行動を起こす児童生徒は家庭に要因があることも多く、多忙な教員がすべてを解決することは難しいものです。スクールソーシャルワーカーなど専門家の助けが必要なこともあります。
NPO法人性暴力被害者支援センター・ひょうご 相談窓口担当者

参考:「学校で性暴力被害がおこったら」性問題行動を起こす児童生徒への対応

性問題行動には要因があります

性問題行動は性的欲求のみで起こるわけではありません。性に関する誤った認識や暴力を学習する環境、保護者の養育能力、衝動性のコントロールが未熟などいくつかの要素がからみあっているといわれています。

ダメなものはダメ

性問題行動は社会のルールである法律を破ることであると毅然と伝えます。また殴る・蹴ると同様に、相手を傷つける暴力であることも伝えます。教室内の下ネタやスカートめくりなど子ども同士の「遊び」だと見過ごしているとだんだんとエスカレートしていきます。学校/学年全体で一貫した方針をとることも重要です。

保護者と一緒に環境を整えます

性問題行動を起こした児童生徒の保護者は、どうしても事態を過小評価し、「手が当たってしまった」などと偶発的な性行動と捉えがちです。保護者が一人で解決しなくてはならない状況に追い詰められないように、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーに相談しましょう。アダルトサイト閲覧制限など性的な刺激をコントロールしたり、着替える場所や自分のプライバシーを守れる場所の確保など家庭での「境界線(バウンダリー)」を守るための工夫を保護者と一緒に考えます。

境界線(バウンダリー)とは:自分と他の人を、また自分のものと他の人のものを分けている線です。人と人との物理的な距離や心理的な境界(許可なく他の人の個人的なことを話す)、社会のルールなどが挙げられます。境界線を守ることは、みんなが安心・安全に暮らすために必要です。

加害生徒自身が性暴力にあっていた場合もある

過去に(あるいは今も)加害生徒自身が体や性器に接触されたり、挿入を伴うような被害の当事者であるケースもあります。自分が被害を受けて腹が立ったりつらかったりした気持ちに焦点を当てさせることで、自分がした行為が相手を同様の気持ちにさせたことに気づくことができる場合もあります。

こんなときはどこに・・・繰り返す性加害、悪質である、計画性がある

「支援機関一覧」から「法的支援」で絞り込みし、最寄りの警察署の少年係や兵庫県警察の少年サポートセンターに相談してみましょう。問題行動を起こす少年への指導や助言を行っています。またこども家庭センターによっては性犯罪の加害者プログラムを行っているところもあります。いずれも加害生徒の保護者が希望しない場合には実施が難しいため、加害生徒の保護者の理解と協力が重要となってきます。

こんなときはどこに・・・家庭にDVや虐待の問題がある

生徒の性加害行動の背景に家庭内での暴力や保護者の精神疾患など複数の問題がある場合が少なくありません。市町村には「こども相談課」「こども家庭支援課」といった名称で総合的な相談窓口があることもあり、学校との連携も行っています。また加害生徒の保護者に支援の希望があれば、「支援機関一覧」から「どうしたらいいか(どこに相談したらいいかわからない)など」で絞り込んでください。最寄りのこども家庭センターや兵庫県立女性家庭センターで相談にのってくれます。

おすすめ本
性の教育ユニバーサルデザイン 配慮を必要とする人への支援と対応 小栗雅之著 小国聡子著 金剛出版
男性の性的逸脱行動の実際と介入・対応方法について紹介されていますが、専門家でなくとも実施できるヒントが盛りだくさんです。