低年齢の子ども同士での性被害の相談の例です。(兵庫県内の性被害についての相談や支援機関の紹介を行うNPO法人性暴力被害者支援センター・ひょうごに寄せられる相談・回答をもとに、地域や年齢など、個人を特定しないよう一般化してご紹介しています)
被害者:小学生女児
相談者:女児の母
相談内容:小学校低学年の娘が、公園で同じ学校の男児から服を脱がされて体を触られていたことが判明した。
聴き取りをしたところ、過去にも複数回被害に遭っていたが「誰にも言うな」と脅されていた。
加害者の保護者に話したが「子ども同士の遊びでしょ」「子ども同士の遊びでしょ」とまともに取り合おうとしない。
娘は怖がって一人で登校できなくなったにもかかわらず、学校は「学校の管理下ではない」として当事者での話し合いを促されている状態。加害者側に転校を求めたいが、相談先は警察でよいか。娘の心のケアの相談先も知りたい。
加害者への怒りやどうにかしたいと思われる気持ちは当然ですが、まずは娘さんが安心して過ごせることが第一です。ご相談者のように登下校に付き添ったり、ふだんとは違う様子はないか注意深く見守ることが大事です。
必要に応じて、専門家にも相談が可能です。警察への通報は、被害児童本人の意向を確認してから行いましょう。
加害者が14歳未満の場合、法律上は刑事責任を問えませんが、調査の対象にはなり、場合によっては通告や指導の対象となり、家庭裁判所で処遇を審議されることもあります。
トラウマ症状を理解する
言葉にすることが難しい子どもたちは、心の傷つきをうまく伝えられず、身体や行動に変化が出ることがあります。例えば、お腹が痛い、頭が痛い、一緒に寝たがる・親にくっつきたがるなどの赤ちゃんがえり、学校に行けなくなるなどいつもと違う様子があれば、できるだけ本人が安心できる環境を整え、回復する力を信じてゆっくり待ってあげましょう。好きなことやできることを少しずつでよいので拡げていき、自信を取り戻すことが必要です。学校では、特定の教員に負担がかかりすぎないよう、事態を把握した時点で管理職に報告がなされ、対応チームを組むことがあるべき状態です。そのため、“この先生だけに伝えて、他の先生には一人も知られたたくない”と要望することは難しいかもしれませんが、詳細な被害情報の共有は被害者本人の信頼する教員と、スクールカウンセラー、養護教諭など見守りに必要な最低限の範囲にとどめてほしい希望があれば、伝えるとよいでしょう。
もしも専門的なカウンセリングが必要かなと思われたときは、スクールソーシャルワーカーが配置されている学校であれば、相談してもよいかもしれません。そうでない場合は、バーチャルワンストップ支援センターの総合的相談窓口で検索し、子どもの被害について相談できるところでカウンセリングについて尋ねてみましょう。
参考:性暴力被害のトラウマ反応の例
加害者が年少の場合、警察に届けるとどうなるか
14歳未満の少年によって刑法犯に該当する行為があった場合、触法少年(下記コラム参照)として警察の調査の対象となります。
被害者・加害者が年少者の場合は、まず保護者から事情聴取し、次に保護者同伴で子どもから話を聞くことが一般的です。事案にもよりますが、悪質な場合などは警察から加害児童に関してこども家庭センター(児童相談所)に通告することや、少年サポートセンターで指導を行うこともあります。
「支援機関一覧」から「法的支援」で絞り込み、犯罪被害者支援の相談または最寄りの警察署に被害内容を伝えたうえで今後の手続きについて相談してみましょう。
被害者の人権を守るために
民事では、親の監督責任(民法714条)を問うという法律構成での損害賠償請求をすることが考えられます。また、加害者の謝罪や転校、学校での過ごし方のルール作りなども、協議・調停などの話し合いのツールをつかって、あるいは、損害賠償請求の訴訟の和解手続きの中で行うことがあります。民事・刑事ともに弁護士が代理人として活動することが可能です。法律相談を利用して、費用・労力、結果の予測などを検討した上で、依頼するかどうか決める流れになります。「支援機関一覧」から「法的支援」で絞り込み、法律相談ができるところにご相談ください。
触法少年とは? 少年とは,20歳に満たない者を意味します。家庭裁判所の審判に付される非行のある少年は,(1)犯罪少年(14歳以上で罪を犯した少年),(2)触法少年(14歳未満で(1)に該当する行為を行った少年-14歳未満の少年については刑事責任を問わない)、(3)ぐ犯少年(保護者の正当監督に服しない性癖があるなど,その性格又は環境に照らして,将来,罪を犯し,又は刑罰法令に触れる行為をするおそれがあると認められる少年)に区別されます。 加害者の通告が警察→児童相談所となるか、警察→児童相談所→家庭裁判所となるかは事案内容にもよりますが以下の法律に基づいています。 少年法 第三条 次に掲げる少年は、これを家庭裁判所の審判に付する。 一 罪を犯した少年 二 十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年 三 次に掲げる事由があって、その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年 イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。 ロ 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。 ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。 ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。 2 家庭裁判所は、前項第二号に掲げる少年及び同項第三号に掲げる少年で十四歳に満たない者については、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、これを審判に付することができる。 (通告) 第六条 家庭裁判所の審判に付すべき少年を発見した者は、これを家庭裁判所に通告しなければならない。 2 警察官又は保護者は、第三条第一項第三号に掲げる少年について、直接これを家庭裁判所に送致し、又は通告するよりも、先づ児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)による措置にゆだねるのが適当であると認めるときは、その少年を直接児童相談所に通告することができる。