性暴力被害児童生徒の心のケア

心のケアとは、決して、一定の時間を割いて子どもの話を心理の専門家が聴くカウンセリングだけを意味する訳ではありません。身近な教職員をはじめ周囲の関係者が、子どものニーズに寄り添い、子どもが話をしたそうな様子なら話を聴いてあげることも、心のケアにつながります。

被害児童生徒の心のケアのために

1.日常生活である学校や家庭が安心・安全な場所であること

傷ついた心を癒すために一番重要なことは、本人がこれ以上、恐怖や不安などを感じないですむように、物理的にも心理的にも安心・安全な環境にいることです。
物理的な環境とは、例えば、再被害にあわないように学校内・外で加害児童生徒との接触を防いだり、その他の危険な目にあわないように誰かと一緒に登下校したりすることです(⇒被害児童生徒への対応(各論)「安全な場所の確保・維持、再被害防止のために」)。
そして心理的に安心・安全でいるためには、周囲の人(保護者、教職員など)が本人の傷ついた心について、十分理解できていることが肝要です。次ページのコラム「性暴力被害によるトラウマ反応」を知っておきましょう。特にどのような時にフラッシュバックが起きるか、もしくはどういうこと(場所、人、状況)を避けているかを早めに本人に確認しておくと、二次被害を与えないですみます。
こもりがちになってしまった被害児童生徒に、定期的に声を掛けたり、話をしたりするなど周囲からの気遣いや支援が、本人の安心・安全感を取り戻す一助になります。また、学級のみんなが知らなくても、信頼できる友だちが本人のことをよく理解しているならば大きな助けになります。

2.本人の主体性を支援すること

性暴力被害に対して、自分はどうすることもできなかったという無力感や自分が悪いからこうなったという罪悪感を持つことがしばしばあります。また、恐怖や不安、様々な心身の症状から、どうしても消極的、悲観的になりやすく、今まで持っていた自信も失われてしまいます。そのため、少しずつでも、本人自身が出来ることを広げていく必要があります。

自分が好きだったこと、みんなから認められていたことなどが少しずつ出来るようになると、自信が出てくるようになります。本人が「自分で」決めることができるよう促し、支えてください。例えば、学校を休むかどうか、教室の中で座る場所、休み時間の過ごし方など、生活を送るうえで不都合や課題が生じた際に、世間体や常識に囚われず、よりよい対処を一緒に考えてみようとする姿勢が大切です。
まずは本人が頑張っているところをしっかり支えてあげてください。

WEBテキスト版

ページ下部からダウンロードできるPDF版「危機管理の手引き」の内容をWebページでご覧いただけます。

性暴力の定義と学校での性暴力被害対応の概要
学校で性暴力被害がおこった場合のタイムライン(学校全体の取り組み)
学校での性暴力を未然に防止するための教育、いつから、どのように?
学校での性暴力を早期発見するためにー「いじめアンケート」のサンプル
被害児童生徒への対応(総論・各論)
被害児童生徒の心のケア
性暴力被害者のトラウマ反応の例
性問題行動を起こす児童生徒への対応
性暴力加害・被害について、子どもへ聞き取りをする際のポイントとケースシートの例
学校での性暴力に関するFAQ、こんな時どうしたら?
└被害児童生徒が被害届を出したくない/他の機関には相談したくないという時には?
└加害児童生徒が認めないときの対応
└学校が被害児童生徒や保護者から 加害児童生徒の出席停止を求められたら?
└インターネット上の被害を相談されたら?
警察・性暴力被害者支援センターができること
弁護士ができること
学校で性暴力被害があった時のマスコミ対応
学校で性暴力被害があった時の連携先一覧(兵庫県)
学校関係者が読んでおくべき性暴力関連の文献・書籍/参考サイト

PDF版ダウンロード

「学校で性暴力被害がおこったら 被害・加害児童生徒が同じ学校に在籍している場合の危機対応手引き」

発行:2020年6月
発行元 
国立研究開発法人科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)による「安全な暮らしをつくる新しい公/私空間の構築」研究開発領域で採択されたプロジェクト「トラウマへの気づきを高める“人―地域―社会”によるケアシステムの構築」の成果物です。教育関係者、医師(小児科、精神科、産婦人科)、福祉、警察、弁護士、NPOなど多領域の関係者で作成しました。
調査研究者:兵庫県立尼崎総合医療センター 田口奈緒

性暴力被害者支援のための活動サポートをお願いします

このウェブサイトを運営している「性暴力被害者支援センター・ひょうご」は、性暴力の被害者支援や予防的活動を行っています。上記の「危機管理の手引き」の配布や「バーチャル・ワンストップ支援センターひょうご」の運営にかかる費用等に充てさせていただきたく、お一人でも多くにご支援いただけると幸いです。

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振込先 郵便振替 00950-4-274165「性暴力被害者支援センター・ひょうご」