性暴力被害者のために警察・性暴力被害者支援センターができること

真相を明らかにするとともに、児童生徒の立ち直りを目的とした支援を行う

警察では、近年、SNSの普及により「子どもの性暴力被害」が増加していることから、捜(調)査による真相解明はもちろん、被害を受けた児童生徒に対する早期保護や支援にも努めています。教職員の中には、「警察に相談するとすぐに事件として取り扱われ、その後の学校と児童生徒、保護者との関係が悪化するかもしれない」と不安に感じる方も多いと思います。警察が学校における性暴力被害を認知したら、まずは教職員等から事案の概要を把握し、事案を事件として取り扱うか否かを判断します。そのうえで、被害児童生徒の安全確保に向けた支援や、加害児童生徒に対する措置等を行います。

事件として取り扱う場合、被害児童生徒には、事件化したためにさらに心の傷を深めてしまうことが懸念されます。警察では、性暴力被害を受けた児童生徒に対して、性格や個々の事情に応じた事情聴取の実施や、プライバシーの配慮等、被害児童生徒の精神的負担の軽減に努めています。具体的には、プライバシーが確保できる聴取場所、時間の設定や希望する性別の警察官による事情聴取など、可能な限り被害児童生徒の特性や個々の事情に配慮した措置を講じているほか、被害児童生徒や保護者等の希望によりカウンセリングの依頼やその費用の一部を公費負担する制度(強制性交や強制わいせつ等の場合)を設けています。

加害児童生徒に対しては、真相を明らかにして、適切な保護処分を受けさせるべく、捜(調)査手続きを行いますが、警察では、処分を受けた後も少年サポートセンターによる立ち直り支援活動等、再非行防止に向けた取り組みを行っています。兵庫県の場合、少年サポートセンターには警察官と少年補導職員の両方がおり、臨床心理士の資格を持っている者もおりますので、生活態度や家庭環境も含めあらゆる相談に対応可能かと思います。また近年はとくに少年(男女を問わず)の被害者支援、事情聴取時の支援、保護者相談などにもかかわっています。

事件として取り扱わない場合でも教職員等と連携し、学校内の安全確保や、事案の再発防止に向けた助言指導や相談・支援は可能です。

2020年2月から、事案の背景にインターネット依存が疑われる児童生徒(加害、被害児童生徒いずれも対象)に対し、公費負担による専門医の診察や、カウンセリングを受けることができる制度を構築しています。

学校における性暴力被害は、周囲の目やその後の人間関係等もあり、被害児童生徒が打ち明けにくく、潜在化し易いものです。学校で児童生徒間の性暴力等の対応に悩むこともあると思いますが、事案の断片を把握できた時点で、まず被害児童生徒支援への第一歩を踏み出すことに成功しています。それぞれの機関によって役割は異なりますが、「子どもを守る」という思いは同じです。被害児童生徒の声を聴き逃すことがないよう、関係機関でそれぞれができる事を共有し合い、最善の方策を考えましょう。

性暴力被害者支援センターにできること

性暴力被害にあった人たちは、それまでの日常生活が一変するような経験を余儀なくされます。傷つき、混乱し、これからどうしたらよいのか途方に暮れてしまうことは、被害にあった児童生徒だけでなく、その保護者や教職員にも当然あることです。性暴力被害者支援センターでは、専門的な研修を受けた相談員がお話を伺いながら必要な情報を提供することができます。被害児童生徒だけでなく、保護者や教職員も匿名で相談することができ、ご本人の了承がない限り、相談内容が外に漏れることはありません。警察の事情聴取や医療機関への付き添い、カウンセリングの紹介や各種費用のサポートなど、各センターにより可能な支援内容は少し異なることもありますが、まずはホットラインへお電話してください。(⇒学校で性暴力被害があった時の連携先一覧(兵庫県)

WEBテキスト版

ページ下部からダウンロードできるPDF版「危機管理の手引き」の内容をWebページでご覧いただけます。

性暴力の定義と学校での性暴力被害対応の概要
学校で性暴力被害がおこった場合のタイムライン(学校全体の取り組み)
学校での性暴力を未然に防止するための教育、いつから、どのように?
学校での性暴力を早期発見するためにー「いじめアンケート」のサンプル
被害児童生徒への対応(総論・各論)
被害児童生徒の心のケア
性暴力被害者のトラウマ反応の例
性問題行動を起こす児童生徒への対応
性暴力加害・被害について、子どもへ聞き取りをする際のポイントとケースシートの例
学校での性暴力に関するFAQ、こんな時どうしたら?
└被害児童生徒が被害届を出したくない/他の機関には相談したくないという時には?
└加害児童生徒が認めないときの対応
└学校が被害児童生徒や保護者から 加害児童生徒の出席停止を求められたら?
└インターネット上の被害を相談されたら?
警察・性暴力被害者支援センターができること
弁護士ができること
学校で性暴力被害があった時のマスコミ対応
学校で性暴力被害があった時の連携先一覧(兵庫県)
学校関係者が読んでおくべき性暴力関連の文献・書籍/参考サイト

PDF版ダウンロード

「学校で性暴力被害がおこったら 被害・加害児童生徒が同じ学校に在籍している場合の危機対応手引き」

発行:2020年6月
発行元 
国立研究開発法人科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)による「安全な暮らしをつくる新しい公/私空間の構築」研究開発領域で採択されたプロジェクト「トラウマへの気づきを高める“人―地域―社会”によるケアシステムの構築」の成果物です。教育関係者、医師(小児科、精神科、産婦人科)、福祉、警察、弁護士、NPOなど多領域の関係者で作成しました。
調査研究者:兵庫県立尼崎総合医療センター 田口奈緒

性暴力被害者支援のための活動サポートをお願いします

このウェブサイトを運営している「性暴力被害者支援センター・ひょうご」は、性暴力の被害者支援や予防的活動を行っています。上記の「危機管理の手引き」の配布や「バーチャル・ワンストップ支援センターひょうご」の運営にかかる費用等に充てさせていただきたく、お一人でも多くにご支援いただけると幸いです。

郵便振替の方は、一口千円より下記にお願いいたします。
振込先 郵便振替 00950-4-274165「性暴力被害者支援センター・ひょうご」